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築地魚河岸

名称  :築地魚河岸
住所  :中央区築地6丁目26番、27番
建築主 :中央区長
設計者 :カトウ建築事務所
施工者 :関東・新星・ティーディーイー建設共同企業体
構造  :鉄骨造
階数  :地上3階
敷地面積:2797㎡+2953㎡
建築面積:2077㎡+2028㎡
延べ面積:4186㎡+3496㎡
竣工年月:平成28年3月

小田原橋棟東側外観

背景
 築地場外市場は、築地市場と共に発展し今日の「築地ブランド」として、食のプロ、一般客、国内外の観光客に支持され親しまれてきた。築地市場移転に伴い、築地場外市場を取り巻く環境は大きく変化していく。

「築地魚河岸」と名付けられた本施設は、中央区が移転予定の築地市場仲卸業者を招き、築地場外市場の活気とにぎわいを維持継承し、「食のまち築地」の新たな拠点となることを目指して計画された。

 

 

 

 

風除室

平面計画

 現築地市場の店舗形態のサーベイを行い、1階店舗は約15㎡を基本ブロックとしてモジュールを定めた。

 本施設は一般店舗であるため、中央通路は買出人、一般客、観光客が買い歩きやすい幅員3mを確保し、店舗区画から前面に2m程度商品展示できるスペースを確保して、幅員としてトータル7m程度の広がりを持った通路空間とした。加えて、店舗外側にはターレーも走行可能な搬入動線を確保し単なる商業施設ではなく市場を意識したつくりとした。

現築地市場の利用形態は、店舗上部の2階にはしごで昇降することにより、事務所兼倉庫として利用している。本計画では2階床に連絡用開口部を設け、はしごを掛けると上下階一体利用が可能な構造としている。

 法的規制で高さを10m以下に抑える必要があり階高に制約があるが、そもそもが漁港に隣接した自然発生的な市場の、「にぎわい」「喧噪」をイメージしており、狭さは良しとするも息苦しさを避けるため通路上部の2階は極力吹抜としてできるだけ開放的な売り場空間とした。

 3階は晴海通りから「大階段」と「シースルーエレベーター」により誘導し、屋上広場と多目的空間を設け、食育イベントの実施など、築地地区に不足する新たな「都市型ひろば」を構築する。小田原橋棟、海幸橋棟は屋上どうしを連絡ブリッジでつなぎ、2施設合わせて大きなイベント等にぎわいの中心となることを目指した。

 
海幸橋棟東側外観立面計画

銀座地区から晴海通りに沿って並ぶ大型のビル群の中にぽっかり空いた3階建ての建物と、街区を隔てた波除通り沿いの低層密集ビル群の表情は全く異なっている。

晴海通りに面する小田原橋棟は、ガラスカーテンウォールと大階段のみで構成され、銀座地区から流れるイメージを持った現代風デザインアイテムで、晴海通りからの人の流れを創出する。

それに対して波除け通り沿いの海幸橋棟、小田原棟は、築地場外市場の人の交流、にぎわい、喧噪のまま周囲に溶け込む下町風商店街の抑えたイメージとなっている。その中で波除通り上空をつなぐ連絡ブリッジは築地場外市場の新たなランドマークとなることを期待している。

(北田英成/カトウ建築事務所)

 

 

通路築地魚河岸設計メモ

 

築地場外市場(築地市場周辺の小売を中心とした地域)は築地市場と共に発展し今日の「築地ブランド」の隆盛に寄与してきました。築地市場の豊洲移転に伴い、築地場外市場をとりまく環境は変化していくことになります。「築地魚河岸」と名付けられた本施設は、これまでの築地場外市場の活気とにぎわいを維持・継承し、食のプロに支持され、一般客・観光客にも親しまれる、食のまち「築地」の新たなにぎわいの拠点を基本理念に計画されました。

基本コンセプトは、

・周辺に集積する約400もの食品関連店舗(築地場外市場)との連携により、食のプロが求める物がすべて揃う施設

・豊洲市場至近の立地特性を活かし、早朝の時間帯から、鮮魚及び青果の多品種かつ高品質の品揃えが実現できる施設

・高い交通アクセス(地下鉄3駅)や、銀座・日本橋などに近接する立地特性を活かし、食のプロはもとより一般客・観光客を広く迎え入れ、まち全体ににぎわいを生み出すことができる施設としています。

晴海通りに接する施設を小田原橋棟、築地市場に接する施設を海幸橋棟とし、両施設とも1階に店舗、2階に事務所兼倉庫を配置しています。築地市場内の各店舗の利用方法を参考に、1階店舗と2階事務所兼倉庫が縦につながりを持てるよう、2階床に連絡開口部を設け、はしごをかけると上下階一体利用が可能になる構造としています。1階通路は3mの幅員をとり、店舗間に腰壁を設置し、廊下が先まで見通せると同時に廊下を広く感じさせることを考慮しています。店舗の通路上部には吹抜を設け、明るく開放的な売場空間としています。

3階には多目的ホールと屋上広場を設け食育イベントの実施など、地域の憩いとにぎわいの場として活用できる計画にしています。両施設の屋上は道路をまたぐ連絡通路でつなぎ、この地域に不足している新たな「都市型ひろば」を形成させます。この連絡通路は遠くからも目にとまり、築地の新たなランドマークとなり、人の引き込みにも効果があると考えています。

小田原橋棟は晴海通りからの人の流れを創出するために、屋上広場に上りたくなるような大階段、屋外エスカレーター、シースルーエレベーターによる空間を計画し、建物入口はガラスボックスの中に引き込むようなイメージで、開放感のあるカーテンウォールを使用しています。

建物両脇には、市場を走り回るターレーも走行可能な幅員の搬入動線を確保し、買出人は中央通路で商品をじっくり吟味できるようにしています。「築地魚河岸」は、店舗の集合体というだけでなく、築地場外市場のにぎわいを維持・継承し、歴史ある築地という「まち」と築地に関わる人々の「ちから」が一体となり、江戸の文化を体現しながら更なる発展を目指せる施設になると期待しています。

(清水 創/カトウ建築事務所 第二設計室 室長)